グレースタイル 沢考史政権について少しだけ語ってみた
m9パール
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妄想会社電脳筆のマスカワさんの描いた同人誌に寄稿した文章の転載です、許可はもらいました、長いので畳んであります

【編集長就任】  
 沢考史が編集長に就任したのは2005年の9月ぐらいだったと記憶している。

 当時の週刊少年チャンピオン(以下、チャンピオン)は、雑誌全体のパワーが著しく欠けており、楽しむには読者側で何とかして作品をいじくるしかなかった。それでも、「サナギさん」「アクメツ」「無敵看板娘」「舞-HiME」「ショーバン」、そして年内に連載が始まっていた「ナンバMG5」と人気と実力を持っている作品はいくつか存在していた。

 しかし、漫画雑誌というのは頭から尻尾まで面白い作品が詰まっていないとダメなものである。この雑誌のこの漫画が面白いけど後はてんでダメ、では立ち読み読者しか増えない。漫画雑誌、とりわけ週刊誌なんかは赤字発行が前提であるが(天下の某最強週刊少年誌だけは別格)、それでもある程度の売上を保ち続けておかなければ作家のアピールスペースにもならない。

 2005年前半のチャンピオンはまさに暗黒期だった……。特に「フリオチ」「さんごくし」のニ作品のダメさ加減は思い出すのも辛い。そんな中での編集長交代であった。


【沢考史という男】
 沢考史が立ち上げた作品で特に有名なものは山口貴由「覚悟のススメ」だろう。グロテスクでありながらも、メッセージ性の強いストーリー、マグマのように熱い葉隠覚悟のキャラクターはチャンピオン読者、否、多くの漫画好きの心を鷲掴みにした。

 連載終了後もその知名度は健在であり、2009年には覚悟のススメのアクションフィギュアがバンダイから発売されたほどである(なお、この企画の担当者は自らの進退をかけてこれを企画したとか。漢である)。
 ちなみに、チャンピオンに来る前は、新創刊された別誌、「月刊チャンピオンRED」で編集長を兼ねていた。この時の月刊チャンピオンREDのキャッチコピー、「熱くなれ、少年心」は沢考史の漫画に対する考え、そのものだと思う。


【新体制、伴った痛み】
 漫画雑誌においての編集長交代とは連載作品の入れ替わりという意味がある。悪く言えば前任編集長の債権処理である。
 終了した作品が数多く、その中には長きにわたってチャンピオンに貢献してきた作家の作品もあった。能田達規「フットブルース」、おおひなたごう「ドリル園児」の二作はそれでいて、単行本の続刊が出なかった(企業力の低い秋田書店で度々起こる現象。単行本の1巻と2巻を出す際、秋田書店にはちょっとした壁がある)。
 この事実は一部の読者にはダメージを与えた。改革には痛みを。そういうことだったのだろうか。


【沢政権の代表作
 すこぅし、前置きが長くなってしまったけれど、タイトル通りここから沢考史政権の代表作について語り尽くそうと思う。
 本当は、年毎に、号毎に、しつこくねちこくチャンピオンを語ってやりたいのだけど、時間も体力もそこまで無いのでかいつまんで、それでいて第一次黄金期にも負けないぐらいの作品が誌面に揃っていることを伝えていこうと思う。
 なお、時系列は前後しているが、些細なことなのであまり気にしないで欲しい。まずは「みつどもえ」からである。

「若い才能が生んだ萌えとギャグの超融合」 
 アニメも放映中、チャンピオン界隈でも毎週話題沸騰、同人誌も今後増々作られるであろう本作。
 しかし、連載開始前には短期連載を3度も繰り返すと連載開始までのハードルは随分と高かった。作者も単行本の巻末で不安で眠れなかったと言っているほどである。

 この同人誌(ブログ)を読んでいるような方には説明不要だと思われるが(偏見)、今作は日本一似ていない丸井三姉妹を軸にしたドタバタギャグ漫画。絵柄はいわゆる萌えっぽい絵だけれども、そこはチャンピオンの作品らしく(?)、キャラをぶち壊さんばかりの力技ギャグや流血沙汰、変態ネタ勘違いネタで絵柄とは真反対の印象を読者の脳髄に叩き込んでくる。メインヒロインの丸井みつばなど、作中ではその体型からか雌豚呼ばわり(本当にぶくぶくしているわけじゃないぞ! 念のため)されているほどである!

 みつばのライバル、杉崎もみつばに対するイタズラをする時の表情といったら……アヘ顔通り越して狂気の表情である。決して女の子可愛いよ女の子で終わらない、それがみつどもえの魅力。
 それと、これは超個人的な嗜好なのだけれども、作中の人物たちが衣装を毎回毎回、同じ話の中で大きな時間経過がある場合はその都度、衣装をころころと着替えるのが見ていて非常に楽しい! その際の衣装選びもこのキャラだったらこういう服とイメージから外れない物をしっかりと選んでいる。

 また、貧乏設定である緒方愛梨というキャラがいるのだが、彼女はその設定通りおんなじ服を着まわし、体操服のネーム部分は学年とクラスだけ書き直したものを使用と徹底したキャラ作りをしている。
 基本はドタバタのぶっ壊しギャグ漫画であるが、芯の部分は丁寧に、それでいて描写されていないキャラの息遣いもしっかりと聞こえてくる。これが本作の最大の魅力。

 
「今風を突き詰めた少年たちの群像劇」 
 不良漫画といえば、やれ頂点だのやれどっちが強いだの見ていて古臭いニオイやその筋の人間でないと楽しめないような敷居の高いイメージ。だが、本作「クローバー」はちょっと違う。そこにあるのは誰もが想像し得る日常。訂正、ほんのちょっとだけヤンキー風味は入ってます。

 本作の魅力はとにかく軽いことだと思う。肩の力を抜いて安心して読める、といってもいい。1つ1つのエピソードに特につながりは無い、隠れた伏線も無いし、独特の思想やねじれた考えを持った狂キャラなんかも出てこない。都合からか度々悪いアンちゃん達との衝突はあるが、そこに大きな陰鬱さは無く、膠着状態になったら主人公のハヤトが敵をどぉん! とぶっ飛ばしてエピソード終了である。

 この軽さゆえに長期連載作品が持つキャラが多すぎて話がわかんねぇ状態すらも無い。少し誇大表現かもしれないが、水戸黄門的な見易さ・安心感すらある。
 ジャンル的には不良漫画。だけれども主人公は不良なんかじゃなく、日常でやっていることといえば釣りばかり。ああ、軽い軽い! だが、それがいい!
 妙な面白みを持った作品である。なお、この作品は連載開始後、数話でチャンピオンの単独表紙を飾るにまでなった。編集部のプッシュもあるだろうが、アンケートの結果が悪くてはいくらなんでも単独表紙を取るには至らないだろう。この軽さは今に受けているのだ。


「これが男の復讐劇」 
「鉄の旋律」という作品をご存知だろうか。マフィアによって両腕を奪われた男が念動力と鋼鉄の義手を手に入れ、復讐を行っていく作品だ。作者は漫画神・手塚治虫。その作品を大胆にリメイクしたのが今作「Damons」(ダイモンズ)。
 米原秀幸の超絶画力とアクション、シンプルでいてハードな復讐劇に酔える傑作だ。 ストーリーの大筋は概ね「鉄の旋律」と同じである。仲間にリンチされ、腕と家族を失った主人公ヘイトが鋼鉄の義手とゼスモスと呼ばれる念動力を手に入れ、復讐を行っていく。

 本作は、大変に感想書き泣かせの作品だった。普通に面白すぎて困った困った。面白いならばそれを書けばいいじゃない、だって? いやいや、普通に面白い物を上手く伝えるのには大変な労力がいるのですよ~。
 「この漫画面白いんだよ~」「へぇ、どのへんが面白いの?」「だから全部が面白いんだって」「いや、だからとくにどの辺が……」「だから全部だって!」となったような方は数多くいるのではないだろうか。

 本作に関してはとにかく読んでみろ! 話をするのはそれからだ! と強引に押し付けるのが正しい進め方だと思う。それだけのパワーがある作品だ。多くを語れるのが良い作品ではない。そんなことに気付かされた作品でもある。


「変わらない日常、変わらない可愛さ」 
 イカ娘可愛いよイカ娘。
 海からやってきた自称「侵略者」イカ娘が海の家れもんにご厄介になりつつ、終わらない夏を過ごす。終わらない夏といっても、別にSF的な世界観なわけでなく、ただ単に海が舞台でなくなっちゃうから夏。
 ってなもんで、軽く爽やかな舞台設定、そんでもって、イカ娘が可愛いのが「侵略!イカ娘」。

 同じチャンピオンに載っている「みつどもえ」がソースをふんだんにかけたトンカツならば、本作がキャベツである。それもしなしなになるほどソースをかけられたキャベツでなく、出されたままのキレイなキャベツ。濃厚な味付けばかりのチャンピオン誌内において、すんばらしい清涼感を出してくれる。

 それなりにコメディやりつつイカ娘の可愛さの波が止まらない。かといって、押し付けられた萌えを感じないのはそのさっぱりとした絵柄のせいだろうか。
 「みつどもえ」に引き続き、アニメ化が決定した本作。まだまだイカ娘の侵略は終わらない。三次元の全てをイカ娘の可愛さで埋め尽くすことが出来るのか……出来る、出来るのだ。

「フフフ……厄いわね」
 怪しいだとか奇妙だとかそういった意味の言葉、それが「厄い」である。この奇天烈な言葉を事あるごとに使うじゅくじ……少女、彼女こそが人呼んで「涅槃姫みどろ」。

 本作は一話完結のホラー漫画である。主人公であるみどろさんが厄い事件・人物を求めて各地を転々、時には事件を解決したり時には引っ掻き回したりとだいめいわ……大活躍。
 関わった人物がゴムホースみたいな臓物をぶちまけてギャァ、ヒロシ参上と描かれた観音像が突如動き出して人間殺してギャァ、それを見てみどろさんニンマリみたいなのが毎話続く。……あれ、この漫画ってホラー漫画……?

 茶化して書いたかのように見えるが実際にこんな感じなのだからしょうがない。ホラーとギャグは紙一重、ということが良く分かる作品である。さぁ、皆さんも本作を読んでレッツサムズアップ!


「最高のファンが描く最高の神話」
 2006年、チャンピオンに衝撃走る。あの車田正美の新連載が始まるというのだ。それも「聖闘士星矢」の新作を引っ提げて。
 舞台は原作星矢終了後。ハーデスとの戦いを描いた星矢達のその後を描いたもの。戦いにより消えない傷を負った星矢を治すために奮闘するアテナ達……そして話は……というところで、まさかの連続休載。いきなりのハンターハンター状態突入に、当時は戸惑いまくったものだ。

 そして、同時期にいきなり始まったのがこの「聖闘士星矢~THE LOST CANVAS~冥王神話」である。
 正直、最初は公式同人誌かよいい加減にしろよフンガフンガと憤っていたものである。

 しかし、話が進むうちに、具体的には魚座の黄金聖闘士アルバフィカが登場したあたりでこの作品は裏返った。そこにあったのは車田テイストバリバリの熱い少年漫画だった。
 こうして本作は当初、敬遠していた原作ファンからも評価をされるようになった。その後、連載は軌道に乗り(当初は数巻分で終わる予定だったらしい)、現在は単行本は20巻、OVA化までしてしまうほどである。

 本作の魅力を語るには前述した魚座のアルバフィカ、蟹座のマニゴルド、そしてハーデス軍の女子、パンドラ達の存在は欠かせない。特に蟹座のマニゴルドの活躍は原作で不遇だった蟹座の汚名、そして蟹座だった読者のもやもやを軽く吹き飛ばすほどだった。冥闘士には積尸気冥界波が効果バツグン! なるほど、そう言われてみればそうか~と納得と感嘆の連続だった。

 そして、今もなお読者の心を掴むハーデス軍のマスコットガール・パンドラ。登場時はミステリアスな雰囲気を出す女幹部、という立ち位置だったが、二人の神に怒られてあうあう、ハーデス様にも怒られてあうあうなどといった展開が続き、次第に化けの皮が剥がれていった。

 後の展開ではやたらとえらぶって登場したものの、相手の攻撃で一発ピンチ、あえなく退場ということを幾度となく繰り返し、パンドラ様って正直……とまで思われるまでになった。今では「みつどもえ」のみつばとどっちがツンポコ女王かと言われるほどだ。ああ、もうパンドラ様可愛いなぁ!

 そんなこんなで正しく熱く星矢をしつつ、しっかりと独自の色も出している本作。現在はクライマックスに向けて突っ走っている最中でまだまだ目が離せない。
 単行本を集めるにはややきつい巻数になってしまったが、原作星矢を愛する方、もういい大人だろうし是非ともドバっと買っちまいなさいな!


「あの名作のリメイクです! ……嘘です」 
 本作「24のひとみ」は突如、クラスに舞い降りた嘘つき教師が生徒たちを巧みな言葉遊びで騙したり、時には真実を混ぜたりして周囲をとにかく引っ掻き回しちゃう漫画。設定はただそれだけである。どこからが嘘でどこからが本当で、登場人物も読者も等しくメダパニ状態!
 これ、キマっちまってるんじゃねぇの、と突っ込みたくなるような背景のネタにも注目されたし。なお、この作品、何を思ったがオシリーナこと秋山莉奈主演でドラマ化した。放送スタイルが余りにもアレで筆者はリアルタイム視聴はしていないが、内容は良いものだったようで……嘘です。


「不遇だった作家が描く熱! 熱! 熱! のロードレース漫画」 
 本作の作者、渡辺航のデビューが今から20年ほど前、集英社の漫画誌の賞をもらい受けてのデビューとなった。  
 しかし、漫画の連載には至らずそれから15年、講談社の月刊誌マガジンスペシャルで「サプリメン」で初連載獲得(この時はナツメハルオという別名義)、しかし作品は打ち切りを食らい単行本化もされなかった。まるでどこぞの出版社のようだ!

 その後、PNを現在の渡辺航名義にし、月刊チャンピオンREDで「制服ぬいだら」を連載、そこそこの人気を獲得するが、売上とか新連載とかの諸々の理由で連載終了、また単行本の最終巻だけ出してもらえないというすんドめ状態で「制服ぬいだら」の連載は終わった。
 売り上げ的な問題もあっただろうが、最終巻だけ出さないというこの仕打ちは堪えただろう……ちなみにこの時の編集長は今、現在語っている沢孝史編集長。……お、おのれ沢!

 制服連載終了後、RED編集部は世の電車男ブームに則り、渡辺航に漫画版「電車男」を連載させた。しかし、この電車男も連載途中原稿取り違え騒動などで、たいそう作者の頭を悩ませた。しかも、また売上不振で打ち切りだったし。……おのれ沢! い、いや……この時の編集長は沢ちゃんじゃないけど。……お、おのれ秋田書店!

 作品発表の舞台をコミックバンチに移した作者は、そこで「ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所」を連載。が、売上不振でまたもや打ち切りに!! ひょっとして作者には何か取り憑いているんじゃないだろうか。また、この華咲探偵事務所は3巻4巻の刷りが少ないので軽くプレミア状態、持っている人はラッキーである。……うーん、しっかし刷りが少ないのに売上不振で打ち切りって不思議な話だよなぁ。良くあることといえばそうなんだけど。

 荷物まとめて田舎に帰ってもおかしくない状況になってしまったが、作者は折れずへこまず作品発表の場を月刊少年シリウスに移す。そこで描いたのが魔女っ子コメディー「まじもじるるも」である。が、この作品も売上不振で打ち切り……とはならず、むしろ、この作品こそが渡辺航反逆の第一歩なのであった。

「まじもじるるも」連載開始後、程なくして「弱虫ペダル」連載開始。渡辺航の本格始動である!
 本作の主人公・小野田坂道は今風のオタク。しかし、小中と自分の趣味の友だちが出来ずに悶々としていた。そして高校でその手の仲間を探そうと尽力、そんな中、ロードレースをやる同級生、今泉と自転車勝負をすることになる。結果が見えている勝負と思われたが、坂道は頻繁に自転車で秋葉原通い、激坂を通ったりしていることがわかり……。

 タイトルとは裏腹に極限なまでに熱い展開に定評のある本作。しかし、時折見られる坂道の精神的脆さがまた少年的、一人だったオタク的で共感できる。そして、そんな彼を支える部活の同士達のカッコいいこと。このジャンプ漫画の真っ青の熱い熱い力技展開が功を奏したか徐々に知名度、売上も上がり、今ではチャンピオンの準看板といえるポジションに。昔のように坂を転がり続ける作者はもういない。これからは漫画界の激坂を昇り続けるだけだ!

 余談だが、作者は本作を連載しつつも月刊連載である「まじもじるるも」を落とした事はない。それどころか、チャンピオンでちょくちょくやる連続カラー(この前のは六号連続カラー)にも難なく対応、その間に趣味である自転車をこいだりしちゃってるのだからもう手に負えない。この超人のような肉体と精神が作者の今まで、そしてこれからを支えていくのだろうなぁ。


「角界と漫画界を吹き飛ばす爆弾」 
 横綱暴力問題、賭博問題でなんだかなぁな事が続く相撲界だが、そんな相撲界のあれこれをぶっ飛ばすような作品が漫画界に落とされた。「バチバチ」である。

 この漫画は前述したダイモンズ同様に読めばわかる的作品である。偉大なる父を持つ少年・鯉太郎の相撲界への挑戦物語。
 本作の素晴らしいところは絵による表現の力だ。どこが素晴らしいってもう全部素晴らしいのだけど、特に筆者が好きなシーンは主人公のライバルの一人でもある村神の登場シーンである。
 ページをめくる際のドキドキをあそこまで表現されちゃもう小躍りするしかないよ……。どれほどすごいかは筆者の筆力で表すのもおこがましいので、是非とも単行本5巻、いや既刊全部買って読んで欲しい。 本作は間違いなく漫画界を駆け上がるはずだ。


「独自の世界を持った作家の一風変わったヤンキー漫画」
 ヤンキー漫画なんていうものはやれ学校の頂点だのやれどいつが最強だのなんて、わかりやすい物だと思われるが、本作「シュガーレス」はちょっと違う。
ストーリー自体は学校の頂点を目指すというわかりやすいものだけれど(言っていること違うじゃん!)、そこにはルールがある。誠実であること。

 ヤンキー漫画とは思えない純なルールがあり、独自が喧嘩に関する哲学を持ち、頂点を目指す。それが他のヤンキー漫画とは一線を画す要素である。

 例えば、主人公の椎葉岳はとにかく食らいついて頂点を目指すと言い、ライバルの向井司郎は努力せずに取る頂点に意味無しと言う。強敵・卜部治は部下をまとめ上げた先に頂点があると考える。そして、作中屈指の人気キャラ、丸母タイジはそもそも頂点に興味がない。

 また、要所要所で言われる台詞にも注目。代表的なのは敵の雑魚不良が言った「ここ(作中舞台の高校のこと)での上下関係は絶対だ、ショートケーキの苺、生クリーム、スポンジのように絶対だ」というもの。
たかだか雑魚の分際でこの発言、つうか、ヤンキーがショートケーキって(笑)。……と、思っちゃうような感じだが、一度聞いたら妙に頭に残るフレーズではないだろうか。頭に残らなかったらもう一度リードプリーズ。

 このちょっとカッコつけたような詩的な台詞が本作の、いや細川作品の醍醐味だろう。いっせーのせで殴り合い、ゆっくりと頂点を目指す。横槍も助けも入らない世界は決して甘くないが、そんな世界で今日も少年たちは輝く。


「スカジャン+不良=変身HERO」 
 スカジャンで変身する少年が悪の組織・更生省と戦っていく作品、シンプルな設定ながらもケレン味のある作品が本作「悪徒」である。
 無法者必滅の誓いを掲げる更生省自体が無法者ちっくだったり、そもそも舞台の学園が世紀末風味だったりとアクの強さが際立つ本作だが、ストーリー自体は真っ当に少年漫画であり、人気は上々、第二の「覚悟のススメ」になれるのではないだろうかと筆者は思っていた。……思っていたのだけど。

 とっても便利な言葉、売上不振により本作は打ち切りとなってしまう。それも単行本3巻以降が未発刊というオチで。秋田書店単行本化の壁は1巻発刊の壁、2巻発刊の壁と2つの壁がある(2巻が出れば最終巻までは滞りなく出るのが通例だった)というのは読者も知っているが、ここに来て新たな壁が作られてしまった。本作が残した爪痕は大きい。

 本作がそれ以上に読者に衝撃を与えたのは最終回の内容だろう。最終回前の内容はこうである。

 敵の精鋭部隊が主人公・港陽虎の学園に攻めてきた。陽虎の仲間も出揃い、次週はバトル勃発、という流れだった。
 この展開に読者はワクワク。誰が誰と戦うのか、なんて予想もされていた。しかし、次週を見て全員がびっくり仰天! 戦いはすでに終わっており、一部の奴らとは和解が成立していたのだ! そして、細かいバトルの経緯は欄外でわずか3行によって語られるという始末。

 武士沢レシーブも裸足で逃げ出す駆け足オチで港陽虎一行は本誌から去っていった。こうして、本作は読者の記憶に残ることとなった。
 それと同時に、好きな作品の終わり方がどうであろうが好きという気持ちはそうは揺るがないということも、教えられた……ような気がする。本当に忘れられない作品だ。


【長きに渡って読者に怪奇を提供した殿】
 長々とここまで個別の作品について語ってきた。これで最後なのでもう少しお付き合いを。
 最後ということなので、長い間、チャンピオンの巻末ポジションを守り続けた本作「現代怪奇絵巻」をちこっとだけ語って締めとしたい。本作は中高生に良くあるあるあるネタを毎週ごとにテーマを縛って、片っ端から羅列していく作品である。

 例えば、学校編だと「蛇口に直接口をつけて飲んでいるのを見て嫌な気分」「些細なことで女教師のヒステリーが炸裂」、女編だと「美少女サンタが来て欲しい」「TVを傾けてパンツが見えないか努力」などといった誰にでもわかりそうなシンプルなネタを4ページに渡って描く作品。連載当初は賛否両論だったが、次第に単純明快なゆえの中毒性にハマるものが増えていったのを良く覚えている。

 中でも筆者が気に入っているのは作中度々出てくる(使いまわされる)オタクキャラ。シンプルで無駄の無いTHE・オタクといったデザインは何度見ても笑える。AA化されたそれはネット上でも良く見られる。
単行本こそ出なかったが、今でも作中であった「~という怪奇」という言葉を使うチャンピオン読者は、筆者も含めて大勢いる。


【沢政権はまだまだ続く】
 語った作品以外にも良作はまだまだたくさんある。
 ホラー漫画でありながら家族愛をも同時に描く「幻仔譚じゃのめ」、多種多様の変態が跳梁跋扈するギャグ漫画「椿ナイトクラブ」、有名作品の第二部「鉄鍋のジャンR」、「ナンバMG5」の続編であり、不良物とHERO物の二足のわらじを履きながらその枠をも飛び越えようとする「ナンバデッドエンド」、先日大団円を迎えたエクストリームギャンブル漫画「ギャンブルフィッシュ」、「無敵看板娘」でげっつぁドリームした佐渡川準の空手漫画「ハンザスカイ」、チャンピオンのファンタジー部門に新たな光をもたらしたダークファンジー「ケルベロス」。
「はみどる!」や「木曜日のフルット」も忘れてはならない。

 惜しくも単行本化されなかった作品にも「LOOKUP!」や「透明人間の作り方」「GOOFY」と怪作秀作揃い。
 今、チャンピオンは第二の黄金期、いや、確変期に入っている。良作が良作を呼ぶ。一つの良作が終わればまた新たな良作が始まる。

 出版不況の昨今、「大変な時代だよなぁ」と言った他誌編集に対し、沢編集長は「ねぇ? おんもしろいよねぇっ」と不敵に笑ったという。こんな編集長がいるんだもの、ハハッ、チャンピオンは負けるわけが無い。そんな雑誌が300円足らずで買えるんだもの。良い時代だなぁ!

<了>
コメント
この記事へのコメント
突っ込んでみる
…は前編集長時代でしたか

・奮闘するアテナ達
これって2009年からの本格始動からで、連載開始当初から3年間はずっと前聖戦だったはずです。

・単行本2巻以降が未発刊
「3巻以降」の書き間違いですよね?

あと、みつどもえの貧乏設定ははっきりそうだとは明言されてないような気もしますが、まあ、そうなんでしょうね。

2006年頃は連載の入れ替えが相当激しかったですが、それに対応するかのように刃牙が半年間ぐらいずっとカラーページ付きだった記憶があります。
2010/11/14(日) 16:17 | URL | noname #0HMKsla6[ 編集]
>nonameさん
>>奮闘するアテナ
文章を書いた時点での進み具合を参照にして一言でまとめてしまったので、連載開始当初から3年の部分には言及しませんでした。

>>2巻以降
完全に書き間違えですね。修正しておきます、すいません。

おがちんの設定はほぼそうだといっても差し支えないでしょうね。
なので、言い切りました。

2006年はカラーページ=バキみたいな感じでしたね。
なので、たまにある他作品のカラーがとても嬉しかったです。
2010/11/15(月) 02:17 | URL | しんせん #-[ 編集]
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秘密: 管理者にだけ表示を許可する\r
 
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